8人が本棚に入れています
本棚に追加
ヘレナとロバートは目配せした。この家は現実と非現実を織り交ぜる。はたして目の前のふたりは現実なのか。ヘレナはわざとペンを落とす。
「ジム、拾ってくれる」
「ああ、いいとも」
ジムはペンを拾った。ヘレナは受け取るふりをして彼の手に触れた。感触がなかった。
「逃げて!」
ヘレナとロバートは踵を返した。ジェニファは追っては来なかった。
はたと、気付くとロバートとヘレナはリビングのソファに坐っていた。
キッチンにキース夫妻がいた。ふたりは何か作業をしているようだった。
ロバートとヘレナはどうにかしてキース夫妻を消し去りたいと思った。この家から出て行く方法がないというなら、住むしかない。そうなるとオリバーとグロリアは邪魔だ。
ふたりの願いを気まぐれな家主が叶えてやることにした。
突然オリバーが倒れた。
「どうしたの、オリバー!?」
グロリアは夫の身体を揺すった。呼吸がひどく乱れているオリバーは、両手で妻の手首を掴んだ。
「オリバー!しっかりして!」
よく見るとオリバーの身体が、足許から少しずつ消えている。
「いや!放してよ!」
夫の手を放そうとするが、とんでもない握力で妻の手首を握り締めている。
「その手を放してよ!」
「グロリア、俺たち夫婦だろう」
じわり、じわり、とふたりの姿は、跡形もなく消えて無くなった。そこに残っていたのは解体された、ジムとジェニファの遺体だった。
最初のコメントを投稿しよう!