HOUSE

18/68
前へ
/68ページ
次へ
ヘレナとロバートは目配せした。この家は現実と非現実を織り交ぜる。はたして目の前のふたりは現実なのか。ヘレナはわざとペンを落とす。 「ジム、拾ってくれる」 「ああ、いいとも」 ジムはペンを拾った。ヘレナは受け取るふりをして彼の手に触れた。感触がなかった。 「逃げて!」 ヘレナとロバートは踵を返した。ジェニファは追っては来なかった。 はたと、気付くとロバートとヘレナはリビングのソファに坐っていた。 キッチンにキース夫妻がいた。ふたりは何か作業をしているようだった。 ロバートとヘレナはどうにかしてキース夫妻を消し去りたいと思った。この家から出て行く方法がないというなら、住むしかない。そうなるとオリバーとグロリアは邪魔だ。 ふたりの願いを気まぐれな家主が叶えてやることにした。 突然オリバーが倒れた。 「どうしたの、オリバー!?」 グロリアは夫の身体を揺すった。呼吸がひどく乱れているオリバーは、両手で妻の手首を掴んだ。 「オリバー!しっかりして!」 よく見るとオリバーの身体が、足許から少しずつ消えている。 「いや!放してよ!」 夫の手を放そうとするが、とんでもない握力で妻の手首を握り締めている。 「その手を放してよ!」 「グロリア、俺たち夫婦だろう」 じわり、じわり、とふたりの姿は、跡形もなく消えて無くなった。そこに残っていたのは解体された、ジムとジェニファの遺体だった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加