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ビルとマリィは店で仕事をしていた。インテリアとインテリア雑貨を取り扱っていて、そこそこ売り上げはあった。
セシルは庭作りに励んでいた。ホームセンターで購入した土に花の栄養剤を混ぜ土作りをしている。なえを植える場所を煉瓦で囲って調えた。
マイクは祖母の作業の様子を窺って声を掛けた。
「おばあちゃん、隣の家を見に行ってみようよ」
屈んだままセシルは、ガーデニング用の手袋に付いた土をはたいて、
「そうね。御挨拶しておかないとね」
好奇心旺盛な少女のような表情をした。
ふたりは早速く、隣の家に向かった。赤茶色の三角屋根を目指して歩いた。周囲は高木や低木が密集しているから、同じような景色が続く。
それにしたって、とマイクは思った。いくらお年寄りのセシルと子供の自分の足でも、そろそろ家に着いてもいい頃のはず。いくらなんでもそんなに遠いはずはないのに、赤茶色の三角屋根の距離が全く変わっていないなんて変だ。
「こんなに遠いものかしらね」
セシルが呟いたので、
「おばあちゃん止まって」
と、ふたりとも立ち止まった。マイクはふと足許に視線を落とした。自分とセシルの靴跡が同じ所を行ったり来たりしている。マイクは身震いした。
いったいどういうこと?頭が混乱した。
「おばあちゃん行くのよそう。僕、疲れちゃったよ」
マイクはセシルの手を握った。
「そうね。あなたの具合が悪くなると、ビルもマリィも心配するわ。もちろん私もよ」
セシルは目お細めた。
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