8人が本棚に入れています
本棚に追加
この奇妙な出来事を夕食の席でセシルは話した。それを聞いたビルとマリィは呆れた表情をした。
「隣の家へ行こうとしたけど、行き着かなかった、だって? そんな話、信じられるものか」
「そうですよ、お義母さん」
セシルは息子と嫁の顔を見つめて、
「嘘だと思うならマイクに訊いてごらん。ねぇマイク、隣の家には行けなかったわよね」
「おばあちゃんの言っていることは本当なの?」
ママに訊かれたマイクは深く肯く、
「本当だよ」
「おばあちゃんを庇ったりしなくていいんだぞ」
とビルは言った。マイクはかぶりを振って、
「本当なんだ」
と真顔で言った。
「それってどうゆうことなのかしら」
マリィはビルに視線を送った。その眼は息子を信じている眼だ。ビルももちろん疑っていない。身体が弱くすぐに病気になるから学校にも行けていない。だから友達もいない。寂しい思いはしているだろうけど、素直な子に育っているとビルもマリィも思っている。
「もしかしたら神の御加護だったのかもしれない」
とビルは言った。
「どう言う意味?」
マリィは訊いた。
「ほら、家が人を喰うって話があるじゃないか」
「何言ってるのビル。あなたホラー映画の観すぎじゃないの」
「マリィ。この世には、僕たち人間には理解できないこともあるはずだよ」
「そうよマリィ。ビルの言う通りよ」
「お義母さんまで何を仰るんですか。そもそも用もないのに隣の家へ行く必要なんてないんです。マイク、あなたも身体が弱いのだから外出は控えなきゃだめよ」
最初のコメントを投稿しよう!