HOUSE

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※ ※ ※ モーリィ=クーリッジの小さな店では、缶詰や飲料水、スナック菓子に煙草と新聞、それに宝くじも売っていた。ビルは毎朝、店へ行く前に立ち寄って朝刊を買う。 「おはよう、クーリッジさん」 「あら、オーエンさん、おはよう」 モーリィはレジの前に立って、ビルが買った新聞を指して、 「行方不明の記事が載っていたんだけどね、わたしその白いワゴン車をみたのよ」 と言った。 「行方不明?」 ビルは新聞を開いて記事を見た。小さなその記事には、キャンプへ行くと言って白いワゴンに乗った四人の若者たちが、姿を消したと書いてあった。 「この車を見たんですか?」 「そうよ。オーエンさんの家の方へ行ったはずよ。それっきり見てないのよ」 「うちで行き止まりですよ。ワゴン車が停まっていれば気付きますよ。きっと途中で引き返したんじゃないですか」 モーリィは首を傾げた。前の路地から戻って来たところは見ていない。 奇怪しな話だ。モーリィはこの話を切り上げた。 ビルはグレーの自家用車に乗ると、モーリィに向かって言った。 「警察に報せた方がいいですよ」 モーリィは苦笑で応えた。 その頃マリィは隣の家の門の前に立っていた。お義母さんもマイクも嘘をついたとは思えないけれど。マリィは怪訝そうに家を見据える。ほぼ空き家状態だと聞いていたけど、白いワゴン車が停まっている。家主が来ているのだろうか。マリィは挨拶をしようと思ったが、手土産持って来ていなかったので、次の機会にしようと踵を返した。 ※ ※ ※ 死んでもいなければ生きてもいない。生と死の狭間に存在する中途半端な人間。自由に動くことのできない状態で、永久に、永遠に、いつまでも、終わりのない、出口のない世界で彷徨う人間。 神の手も届かなければ、悪魔の手も届かない。〝HOUSE〟はどれにも属さない。 オリバー=キースとグロリア=キースは、その世界に閉じ込められていた。
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