HOUSE

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この事件を調べることにしたのは、子供の頃に見たホラー映画が今でも鮮烈な記憶として残っているからだ。内容は詳しく覚えていないけれど、ドライブ中の若い男女のグループが道に迷い奇妙な儀式行なっている所に出くわし、彼らに捕らえられ連れ去られるシーンが、あまりにも怖くて忘れられずにいるのだった。 スティーブは友人のカメラマン、サム=ウィルソンと彼の娘エミリアを伴って、消えた若者たちのことを、彼らの友人、知人に会って 話を聴いていた。 「ジェニファね。ちょっと変わった子だったけど、悪い子じゃなかったわ」 「ジム?お調子者だね。人の話を聞かないところがあってさ。何でも自分で勝手に決めてやってしまうからさ。トラブルは多かったけど、根はいい奴だったよ」 「ロバートか。あいつは真面目すぎだよ」 「ヘレナ? いい子よ。少し神経質な所もあったけど」 誰もが同じことを言った。行方不明になった三年前のことを訊くと、 「キャンプに行くって言っていたけど、詳しくは知らない」 と、これも皆、同じ応えてだった。 都市のカフェテラスでエミリアは退屈そうにしている。スティーブが、 「悪いねエミリア。パパを借りて」 「おじさんは、わたしのことを気に掛けるべきだわ」 と口を尖らせる。 「じゃあこうしよう。〝クリンベル〟をプレゼントしよう」 クリンベルは着せ替え人形のことで、一九五〇年に発売された、息の長い人気商品だった。 「ほんと!?」 「もちろん、約束するよ」 フィッシュ&チップスを盛った皿を運んで来たサムが、 「何の約束だ?」 と、ふたりに訊いた。
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