HOUSE

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「クリンベルを買ってくれるんだって」 エミリアが笑顔で応える。サムは微笑して、 「それならクリンベルのお洋服も買ってもらうといい」 と言ってスティーブの顔を見る。 「俺にはないのか御褒美」 「記事が出来たら奢るよ」 「いつになることやら」 サムはビールを呷って、 「三年前の失踪事件より、一カ月前に目撃されたUFOの方が取材しやすいんじゃないのか」 と言った。リアルな失踪事件より宇宙人の方が楽しいし、ロマンチックだと思うけどな、と言うサムに、 「UFOなんてありきたりだろう」 と全く興味を示さない。UFOの記事は多く、巨大な頭の二頭身の宇宙人の姿ばかりが誌面に登場して食傷気味だった。四人の若者の宇宙人による誘拐拉致は考えにくい。なのでUFOは調べない。 「宇宙人は見飽きているんだ」 スティーブはジンジャーエールを飲んだ。 「本当にあんな姿をしているのか、俺は疑問だね」 サムは言った。アップルジュースをストローで啜っていたエミリアが、 「宇宙人はスコーピオンなの」 と真面目は表情をした。 「スコーピオン?」 「そうよ。大きなスコーピオンよ」 娘の発言にケラケラ笑ったサムは、 「絵本さ。『夢見るスコーピオン』っていってさ、カラカラに乾いた星に住む巨大なスコーピオンが地球を眺めて思うんだ。生まれ変わったら海の生物になってみたいって。で、望みが叶ってシャチになったけど、海は汚染されて死んでしまうのさ」 ぐいっとビールを呷った。
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