8人が本棚に入れています
本棚に追加
「切ない話だな。それってさ、環境問題に警鐘を鳴らしているってこと?」
「さぁ、どうだろう」
スティーブたちが坐っている席の隣のテーブルに、親子連れが腰を下ろした。少し大きめの星条旗のピックが刺してある、チキンバーガーが少年の前に置かれた。
「誕生日とはいっても、お店にまで来ることはなかったのよ」
母らしき女性は不満そうな声だ。
「いいじゃないか。母さんのことばかり考えていたんじゃ日常生活ができやしない」
「ええ、それはそうだけど。だからってお祝いする気分には悪いけどなれないの」
夫婦の会話から、少年の祖母になにかあったらしい。興味をそそられたスティーブは席を立ち、
「誕生日ですか。せっかくだから僕からもお祝いさせてもらいたいんだけど。甘い物は好きかな?」
少年に訊いた。少年は両親に視線を送った。父親が笑みを浮かべ、
「御親切にどうも。しかし、」
と言葉を濁している。スティーブは、
「これは失礼。僕はフリーライターをやっています。」
と名刺を差し出した。少年の父は名刺を受け取ると、
「僕はビル=オーエン。彼女は妻のマリィ。それから息子のマイク。今日で十二歳になるんだ」
ビルの話を聞いていたエミリアが、この店で人気のシナモンドーナツを皿にのせて、マイクの所へ持って行った。
「お誕生日おめでとう。わたしはエミリアよ。八歳になるわ」
「ありがとうエミリア」
マイクはシナモンドーナツを頬張った。
「可愛いお嬢さんね。マイクのためにありがとう」
マリィは頬を緩めた。エミリアはサムに向かって、
「パパもお祝いしてあげて」
と言って席に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!