HOUSE

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リビングで両親たちが話をしているとき、マイクはパパに作ってもらった踏み台の上に立って、祖母からもらった双眼鏡で外を眺めていた。最初は常緑樹で羽を休めている鳥を観察していた。そのうち飽きて隣の家を見るようになった。いつもは誰もいないから、覗いたっていいよねと思いながら。 陽が西に傾いて空が闇に包まれ始めた頃、隣の家の窓から明かりが漏れてきた。家主が泊まりに来ているのかな?マイクは双眼鏡を通して隣の家を見ている。庭に面した部屋はたぶんリビングルームで、二階のベランダのある部屋は寝室のようだ。他は見えない。 マイクは隣人に見つからないようにしなくちゃ、と思った。それは悪いことをしているという、後ろめたさがあったからだった。 ※ ※ ※ 「おっかしいなぁ」 白いワゴン車を運転していたジム=カーターは独りごちる。 「どうしちゃったの?」 後部座席から身を乗り出したヘレナ=スミスが地図を広げて、助手席のロバート=ベンソンに渡す。ロバートは地図に目を通して、 「道は間違っていないみたいだ」 と言うのでジェニファ=プランタが地図を取ってゆびえでなぞった。 「違うわよ。さっきの所で右に折れなきゃいけなかったのよ」 「いや、左でいいんだ」 ロバートは後ろを向いてジェニファに言う。 「どっちなんだ?俺が自分で確かめるよ」 ジムはワゴンを端に寄せて停め、ジェニファから地図を取った。ヘレナがそれを覗いて、 「この地図古くない?」 「そんなに古くはないはずだけど」と応えたジムに、 「ほらここ。右に折れたれ三叉路でしょう。でもそんな道はなかったわ」 ヘレナが地図を指す。確かに右に折れたらすぐに三叉路がなければいけないのに、ずっと一本道だ。
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