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「引き返すか?」
ロバートはみんなに訊いた。
「もうじき日が暮れるわ。この先、開けた場所になってるみたいだから、今日はそこで夜を明かしましょう」
ジェニファは楽しんでいるようだ。
「そうだな。車中泊も悪くないか」
ジムは再びハンドルを握った。
ヘレナとロバートは彼らに従ったけれど、内心は引き返したかった。
緑に覆われた狭い砂利道を白いワゴン車は進んで行く。彼らの目的地は小川の傍のキャンプ場だった。ところがクーリッジさんの店の所で、
「この細い路地から行けば近道みたいだ」
と、ジムが路地へ入ったのだ。ロバートは、
「知らない所は、遠回りしてでも確かな道を行くべきだ」
と忠告したけれど、ジムは、
「平気、平気」と聞き入れなかった。
車が進んで行った先に一軒の家が見えた。
彼らは暗がりに灯された明かりを見つけ安堵した。
「あの家で道を尋ねよう」
ジムは開け放たれている門の中まで車走らせ、玄関の近くで停めた。
ジェニファが車を降りた。
「すみません」
ドアをノックする。
「どちらさま?」
中から声がした。
「道をお尋ねしたくて」
と言うとドアが開いた。中年の女性が現われジェニファを見据え、その斜め後方の白いワゴン車も見た。
「どこへ行きたいの?」
優しい声でジェニファに訊いた。
「この辺りにキャンプ場があるはずなんですが」
「キャンプ場? この辺にはないわ」
「ないんですか?」
「ええ。広い通りをずっと北へ行った所にならあるわ」
ジェニファは振り返って、
「キャンプ場はこの辺じゃないんですって。あの広い道を北へ行った所ですって」
少し声をあげて言った。ジムはそれを聞いて眉尻を下げた。近道のはずだったんだけどと呟いている。ロバートは苦虫を噛み潰したような表情をして、ヘレナは渋面をつくった。
「お困りのようね。どうかしら、うちに泊まっていっては」
と女は言った。
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