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キッチンではオリバーが夕食の支度をしていた。パテを皿に盛りトレーにのせた。
「あいつらの口に合うかね」
「お腹を空かせていたら、何だって美味しいと思うものよ」
「だといいけどな。お前も覚えているだろう、あの釣り人のこと。パテを口に運ぶなり吐き出したじゃないか。この肉は何の肉だって騒いでさ。俺はこう応えたさ『年老いた動物の肉だ』ってね」
「もちろん覚えているわよ。魚肉しか食べたことのない人だったのよ」
「偏食はよくない」
オリバーは鼻で嗤った。
グロリアはトレーを持って二階へ上がった。
ヘレナはこの家に入ってからというもの、妙な匂いが気になっていた。
何かが腐ったような焼けたような、コールタールのような、よくわからない匂いだ。
「何か臭いと思わない?」
ヘレナはみんなに訊いた。ジムは鼻をくんくん鳴らして、ジェニファもロバートも首を少し突き出し顔を上げ、空気中の匂いを嗅いだ。
「微臭いかな」
と言ったのはロバートで、ジェニファは
「そう?私にはわからないわ」と首を傾げた。
「ごめんなヘレナ。俺もわかんないや」
そう言うとバスルームに入って行った。そこへグロリアがパテを運んできた。
「キース家特製のパテよ。お口に合うかしら」
ヘレナはトレーを受け取ると顔をしかめた。
パテの匂いが鼻を突いた。
「何かあったら言ってちょうだい。遠慮しないでね」
そう言ってグロリアは部屋のドアを閉めた。ヘレナはトレーを持ったまま
顰面をしていた。
「お腹がペコペコだったの」
ジェニファがトレーの上からパテを掴んで口に入れた。
「ジェニファ!そのパテ腐っているかもしれないわ。臭いもの!」
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