HOUSE

8/68
前へ
/68ページ
次へ
キッチンではオリバーが夕食の支度をしていた。パテを皿に盛りトレーにのせた。 「あいつらの口に合うかね」 「お腹を空かせていたら、何だって美味しいと思うものよ」 「だといいけどな。お前も覚えているだろう、あの釣り人のこと。パテを口に運ぶなり吐き出したじゃないか。この肉は何の肉だって騒いでさ。俺はこう応えたさ『年老いた動物の肉だ』ってね」 「もちろん覚えているわよ。魚肉しか食べたことのない人だったのよ」 「偏食はよくない」 オリバーは鼻で嗤った。 グロリアはトレーを持って二階へ上がった。 ヘレナはこの家に入ってからというもの、妙な匂いが気になっていた。 何かが腐ったような焼けたような、コールタールのような、よくわからない匂いだ。 「何か臭いと思わない?」 ヘレナはみんなに訊いた。ジムは鼻をくんくん鳴らして、ジェニファもロバートも首を少し突き出し顔を上げ、空気中の匂いを嗅いだ。 「微臭いかな」 と言ったのはロバートで、ジェニファは 「そう?私にはわからないわ」と首を傾げた。 「ごめんなヘレナ。俺もわかんないや」 そう言うとバスルームに入って行った。そこへグロリアがパテを運んできた。 「キース家特製のパテよ。お口に合うかしら」 ヘレナはトレーを受け取ると顔をしかめた。 パテの匂いが鼻を突いた。 「何かあったら言ってちょうだい。遠慮しないでね」 そう言ってグロリアは部屋のドアを閉めた。ヘレナはトレーを持ったまま 顰面をしていた。 「お腹がペコペコだったの」 ジェニファがトレーの上からパテを掴んで口に入れた。 「ジェニファ!そのパテ腐っているかもしれないわ。臭いもの!」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加