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【2】花屋さん
「さぁ~て、今日も皆で綺麗な花を咲かせてくれよ~」
花屋の店先に並べた水を張ったバケツに切り花を入れる。
まるで花たちが “今日もよろしく!” とでも言うかのように揺れた。
立ち上がり伸びをしながら5メートルほどメートルほど先にあるコンビニに、それとなく視線を向ける。
まぁ、居る訳ないか…いつも夕方とかだもんな…
コンビニの入口を掃除している少し背の高い姿を思い出す。
チラリと見た横顔は同い年ぐらいだろうか、けれど端正な顔立ちをしていた。
昨日の帰りも店を出て直ぐに “アイツ” に会った。
挨拶をするとぎこちない返事が返って来ただけだったけど、それでも俺には充分だった。
一日の終わりに “アイツ” に会えた。
それだけで、俺にとって最高の日になるから…
早くに父親を亡くし女手一つで俺を育ててくれたお袋を助ける為、高校を卒業すると直ぐに働き始めた。
大変なのにいつも笑顔を見せるお袋を笑わせたくて、他人を笑顔にさせる仕事をと選んだのが花屋だった。
家族や恋人、友人に贈る花を選んでいる時の客の顔を見るのが好きだった。
贈られた人がどんな風に喜んでくれるだろうかと考えるのが楽しかった。
何より、色んな花に囲まれていると嫌な事や辛い事を忘れられた。
「花を好きな人に悪い人なんていないのよ」
毎年誕生日に贈った花束を見ては嬉しそうにお袋はそう言った。
その季節だけに咲く花や、いつでも見る事のできる花。
どんな花も、その花だけの良さがある。
コンビニで働く “アイツ” は、どんな花が好きだろうか?
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