悲恋

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 「今、どこにいますか?」  彼女の必死の声が聞こえた。  悲痛なその叫びに、私はすぐさま答えた。  少しでも彼女の不安をとるために。 「あなたのすぐそばです。モモ殿。すぐそば。もうじき、この渦が収まれば、私はあなたのもとへ駆けつけます」 「男爵様、モモは怖いです。不安です。この渦はいつまで続くのですか?」 「わからない。けれど、止まない雨が無いように渦はいつか収まります。だからそれまで」  さらさらと体が崩れ始めるの感じた。  どうやら限界が来たらしい。  これもまた、高貴なる血筋の宿命か。  だが、崩れたとて無に帰するわけではない。  むしろ無数の私となり、彼女を包み込むことができるはずだ。 「しかしモモ殿……。今一度、私はこの手であなたを抱きしめたかった」 「ああ、私もです男爵様。あなた様の姿を一目見たかった……」 「でも、寄り添うことはできます。姿は見えずとも、あなたのそばに私はおります。この愛と共に……」 「男爵様。モモの愛は永遠です。あなた様を心から愛しております」 「今ひと時の分かれです。できれば来世は、このような忌まわしき運命ら解き放たれたい。そしてモモ殿、あなたと共に……」 「ああ、男爵様……。私もです。あなた様と共に歩み、そしてともに最期を迎えたいのです」 「モモ殿……」 「男爵様……」
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