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プロローグ
離さない、離してはいけないと誓ったはずなのに約束を守ることが出来なかった。ほんの数分前まで恋人と口論した病室のベッドの布団の上で嗚咽を漏らして泣く。
腹部の傷口よりもずっとずっと胸が痛い。息をするのもやっとなほど苦しい。
大切な人との別れがこんなに辛いものだとは思わなかった。恋人の悲しそうな背中で病室を出て行く姿が目に焼き付いて、何度も想起さえては視界が滲む。
だけど、自分の決断が間違っていたとは思わない。正しかったのだと必死ににいい聞かせていた。
じゃないとお互いがお互いをダメにする。
彼の夢ある未来の邪魔をしてしまう……。
俺の為に全てを投げ出すなんて芸能活動を生きがいとしている彼にあってはならないこと。
それほどまでに自分は彼を依存させる存在になってしまった。彼の為にも二人の為にもなくてはいけない別れだったんだ……。
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