祝賀会

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普段、律以外に興味を持たなかった渉太が年末の歌番組に出ていた彼女を見て天使のような歌声と姿に見惚れた。正しく美麗という言葉が似合う女性。テレビで見たままの彼女が渉太に話し掛けてきていることに、悲しんでいたことも忘れて呆然と彼女が向かって来る姿を眺めていた。  渉太が名前を口にするとにこやかに微笑む彼女に、思わず照れて目を伏せてしまう。 「律仁の恋人よね?一般人の大学生だって噂で聞いたけど」 「あー……。えっと……」 「まぁ答えたくなかったら構わないけど。律仁とは同士みたいなものだし、そんなに警戒しなくて大丈夫よ」  答えたくなかったわけではないが、律仁さん自身ではない以上、同じ事務所の人間であっても一般人である自分の口から安易に他言していいものか躊躇っていた。一応、表面上では弟ということになっているし……。  多分先ほどの彼女の口振りから知っているような感じではあるけども……。本人は警戒しなくてもいいと言っているが、前方から感じるオーラの眩しさに尻込みしてしまう。  「律仁さんと雪城さんってその……仲いいんですか?」 「んー。どうかしら?悪い方ではないと思うけど、向こうがどう思っているかしらね」    以前渉太がテレビの中で綺麗だと見惚れていたとき彼女の歌に対して好かないと言っていたことを思い出す。捨てられた子犬のような目で画面上の彼女を眺めていたことも……。  ただの事務所の同士ではない気はしていた……。渉太が見ることができている彼は普段の彼であって、仕事の時の彼は表面上でしか知らない。 「ただ言えるのは律仁、凄く人に依存する傾向にあるからちゃんと貴方が距離感をもって付き合ってあげてね。私にはそれが出来ずに突き放すことしかできなかった……。彼と一緒にいることは私にとってもリスクが大きかったし、何より彼よりも自分が大切だったから」 「それって……」 「それは律仁から聞いて頂戴。私から話すことじゃないでしょ?今彼の恋人は貴方なんだから。だけど、本当に彼を愛しているなら突き放すことだけが彼の為だなんて思わないでね」 心を揺すられて落ちていた気持ちが彼女の言葉によって持ち上げられたような感覚がした。彼女の歌は全ての恋をする人の苦しさや辛さを歌にしたものが多い。それで共感を得て指示されている。しかし、彼女の芯の中には誰かを励ますようなものも持っているような強い心のようなものを感じた。
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