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「確かに雪城さんと初めて話して、彼女は綺麗なだけじゃなくて芯の強い女性だなって思いました。律仁さんが惹かれるのも納得できるというか……。人として素敵な人だなって……」
全く嫉妬心がない訳では無いが、綺麗事ではなく正直に思ったことを律仁さんに告げると
「無理しなくていいよ……。気分がいいもんじゃないだろうし……」と彼にしては珍しく後ろ向きな返事が返ってくる。
眉を下げて心做しか不安げな彼は、過去の話をするのを怖がっているように見えて……。
ここは自分が彼を広い心で受け止める強い意志を示さないといけないような気がした。
自分が弱々しくいちゃいけない……。
律仁さんの過去に怖がっていちゃいけない……。
「律仁さんらしくないですよ。無理はしてないです。嫉妬していないって言ったら嘘になりますけど素直に俺もそう思ったことを言ったまでです」
自分の嫉妬心なんてどうとでもなる。
今は律仁さんの過去に真剣に向き合いたい気持ちの方が大きい。話そうとしてくれている彼が安心して打ち明けられるような懐の大きさを、彼と同じように持っていたい。
「やっぱり渉太は優しいいい子だよ……」
「当然です。俺だって過去の尚弥とのこと、律仁さんは黙って聞いてくれたから……。俺、全部受け止める覚悟はありますから。だから、続きを聞かせてもらえますか?」
渉太は数歩前に前に出て律仁さんと向かい合う。自信過剰になるなんて性に合わなくて、言葉に出すのに照れ笑いをしてしまったが、嘘偽りなく真っ直ぐに律仁さんを見据えた。
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