星空の下での決意

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客足の少ない夜のコンビニアルバイト。優先で流れている邦楽を耳で聞き流しながら、無心に店内のモップがけをする。 「最近、よく流れているよね。この曲。渉太くんは知ってる?」  モップ掛けをしているとレジ前で接客し終えたお団子頭の同年代、花井柑奈さんに問われて我に返った。有線によく耳を傾けて聞いてみるが全く知らない曲に首を傾げる。歌声と曲調から男性アイドルグループだと思うけど、疎い渉太にとっては難題だった。 「んー。ごめん、花井さん。俺はこの曲、知らないかな……」 「そっかー。あたしもよく知ってるわけじゃないんだけど。ほら、うちの店でもコラボ商品売ってる、TーPRINCEだっけ?仁香ちゃんがセンターの那月(なづき)くん推しだって騒いでいたじゃない?」 花井さんが徐にレジ前にあったNINTIA(ニンティア)ならぬタブレット菓子を取り出してくるとパッケージにある三人組の男性のうちの真ん中の男を指差した。ハイトーンの茶髪に今流行りの王子様を連想とさせるセンター分け。  眩しいくらいの笑顔。律が大人の色気を醸し出すアイドルだとしたら、この子らは正統派のキラキラアイドルと言った方が正しいのだろうか。有線でかかっていた音楽もピュアな男子の恋愛ソングっぽかったし……。 確か真ん中の子は律が出演するドラマに出ていた記憶があるから顔は見たことがある。しかし、特別興味が湧いているわけでもない渉太にとってこの話題にはあまり需要がなかった。 「ああ、そうなんだ。やっぱり高校生って若いね」    渉太自身、花井さんが話す高校生アルバイトの仁香ちゃんこと武内仁香さんとは接点がない。ごくたまに出勤時間が被ることはあるが、業務上の会話以外したことがないのが事実だった。花井さんによれば彼女は律を含むアイドル全般が大好きだとか……。 「ねぇー。移ろいやすいのは若さ故っていうか、この間まではリツ、リツ言ってたのにね」  好きなものが変わって行くのはごく自然なことで、若さに限ったことではないのかもしれない。 以前律仁さんが『人の心は移ろいやすいんだよね。長年ひとつのものだけを追いかけ続けるってそう簡単じゃない。その人の環境と価値観ってその時々に変わるじゃん?だから俺にとっては昔から応援してくれているのは有難いことだよ。気づいたら離れてしまった子とかいるから……。少し寂しいけど仕方ないって思っている……。でも、だからって長いから偉いとかじゃなくて、もちろん何かをきっかけで最近好きになってくれた子も大切なファンだと思っているよ。今好きな子も好きだった子も、その子にとって俺の事好きでいてくれた時間がいい思い出になってくれていれば充分』と熱く語ってくれたことがあったのを渉太は思い出していた。
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