1話

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「それにしても長尾さんのとこは災難続きよね。 芳子(よしこ)さんがあんなことになって、今度はその孫がなんて」 「そうねえ。芳子さんって、確か自宅の階段から落ちたけど当たり所も悪くて()()なったんでしょう」 「そうそう。要介護状態っていうの?とても素人の手に負えるものじゃないから、普段は施設に入ってるらしいわよ」 「怖いわねぇ、私たちも歳だし気をつけないと……」 移り変わった噂と視線。その対象は百合花たちのそばで放置された車椅子に座り、呆けたように宙を見つめ続ける老婆。 それは、かつての私を苦しめた大きな要因の一つである元義母の姿だった。 元義母がこんなことになっているのも、私は今日まで知らなかった。 「……」 ふと、百合花と視線が重なる。 その一瞬、その口元があの日のように嗤うのを、私はこの目で確かに見た。 だからこそ、それを疑わずにはいられなかった。 「……陸斗のことは、本当に事故だったの……?」 百合花を人気のない場所に連れ出して、私は尋ねる。 「……え? そう、ですよ? 警察の人の話でも事件性はないっていう判断でしたし……」 どうしてそんなことを聞くのかと、百合花は怪訝な表情を浮かべて、それからハッと何かに気づいたようにこちらを見返してくる。 「天音センパイ、もしかして……私がそうなるように仕組んだ、とか疑ってるんですか……?」 「……」 「そんな……っ」 私がその言葉を否定しないことに「ひどい」と声を上げて、百合花は手のひらで顔を覆うと、しゃくり上げるように肩を震わせ始めた。 「……そう、疑ってるよ。 だって私は、貴方の本性を知ってる」
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