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「……あはっ」
指の隙間から見えた目は、三日月に歪んでいた。―――百合花は笑っていたのだ。
「そろそろ泣き真似するのも限界だったんですよねぇ。だって私は、ちっとも悲しくなんてないのに」
そしてまた、その腐った本性が露呈する。
「なっ……」
「ねぇ、アンタも見たでしょ?
お義母さんの哀れな姿。もうまともに話すことすらできないの」
私の声を遮るように、百合花が言う。
「私があの家に入ってからも何かと口出そうとしてきてウザくて堪んなかったけど、まさかあんなに上手くいくとは思わなかったなあ」
「……何か、したの?」
「ちょぉーっとしたイタズラで、後ろから脅かしてみただけですよぉ。そしたらお義母さんってば大袈裟に驚いて、階段から足を滑らせて……」
「そのまましばらく放置してみたら、上手いこと再起不能になってくれました♡」
この女は、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。
「あーそうそう、それでりっくんの話でしたっけ?」
どうしてそんなことを、一切悪びれもせず言えるのか。
「あれは本当に事故なんですよぉ、私は何もしてないし。こんなことになるなんて、まさか予想もできなかったです」
私にはきっと、一生理解できない。
「ただ、邪魔だからそろそろ消えて欲しいって思ってたのは確かだけど」
「……は……?」
心臓が嫌な音を立てた。唇は震えて、声が上擦る。
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