6話

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思わず、気の抜けた声が出た。 「寝ろって、何がどういう……」 「何ってそのままの意味。まあベッドはないから、そこのソファを代わりに使ってもらうことになるけど」 「いやでも、そんな……どうして?」 戸惑う私に、蓮見さんは言う。 「お前、ろくに眠れてないだろ。すげー顔色悪いよ」 「それは……」 図星だった。あれからも寝不足を重ねた顔色は、安物の化粧品を塗りたくってみても隠せないらしい。 そんな顔を晒していることへの羞恥心で、思わず顔を背けてしまう。 「そんな顔してるやつ働かせておけるかよ。ほら、こっち」 蓮見さんがソファをポンポンと片手で叩く。 それでもまだ躊躇う私に向けて、3本の指を立てて見せた。 「所長命令、3秒以内な。3、2、1……」 「えっ、ちょ、待ってください……!」 慌てて駆け寄って来た私へ、蓮見さんは少し意地悪く笑った。
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