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そして私は促されるままソファに横たわる。
「キリのいいところで起こしてやるよ」
「ありがとうございます……」
「チビのことはこっちで見てるから」
「……でもやっぱり、私は仕事で来てるのに……」
本当にいいのかな。そんな思いが付き纏って、蓮見さんのことを見上げる。
「余計なこと気にしなくていいから」
すっと蓮見さんの手が伸びてくる。
「さっさと寝ちまえ」
その言葉と共に、視界が暗くなった。
蓮見さんの手のひらが私の目元を覆い隠しているのだと理解する。
私は目を閉じる。手のひらから伝わる温もりが心地良かった。
「……こういう時は子守唄でもうたうべきか?」
蓮見さんがそう言って、囁くように小さく歌い始める。
美声だけどどこか調子の外れたその子守唄に、自然と笑みが零れた。
そして、徐々に眠気がやってくる。
ぬるま湯に浸かっているような安堵感の中、私は意識を手放した。
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