6話

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目を開けて一番に見えたものは、いつもと違う天井。 私は跳ねるように上半身を起こす。グレーのブランケットがばさりと床に落ちた。 そうだ私は蓮見さんのところに来て、それで。 いつの間にか眠っていたのだ。夢も見ず、泥のように。 「おー起きたか。おはよ」 私の起床に気づき、事務机に座る蓮見さんが顔をあげた。 「……おはようございます。あの、私は一体どのくらい寝てましたか……?」 私は震える声で蓮見さんに尋ねる。体感では随分と眠りこけていたような気がして確かめるのが恐ろしかった。 「んーざっと2時間半ってとこか」 「にじ……っ!? す、すみません私そんなに寝るつもりはなくて……!」 「いーよ別に。寝ろって言ったのは俺だしな」 そう言い残しキッチンへと消えていった蓮見さんは、グラス片手にこちらへ戻ってくる。 「はい水」 「……ありがとうございます……」 ソファの上で呆然とする私にそれを手渡すと、自らも向かいのソファに腰掛けた。 グラスの中の水を一口飲む。その冷たさが喉を潤し、私を現実へと引き戻すようだった。 「……陸斗は、大丈夫でしたか? 2時間半なんて長い間任せきりにして、色々とご迷惑をおかけしました……すみません」 「何も問題なかったよ。 あ、ただチビのオムツ替えで荷物の中からオムツ拝借したから、そういうのに気ぃ悪くしたら謝る」 「いえそんな……!! むしろ感謝しかないです、本当にすみません……ありがとうございます」 「どういたしまして。さっきまで相手してたから、今は遊び疲れて寝てる」 ベビーベッドは事務机の横に移動していた。 私は立ち上がり、その傍に寄って中を覗き込む。 「本当ですね……」 そこには蓮見さんの言葉通り、バンザイしながら眠る陸斗の姿があった。 その天使のような寝顔は、どんな時でも私の心を落ち着かせてくれる。
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