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百合花に気を取られ、悪い方にばかり考えが流れていた。
だめだな、私。心を強く持つと決めたばかりなのに、情けない。
「……何か、あったのか?」
そんな私の元に、蓮見さんの優しい声が届いた。
私は蓮見さんに、ここ1週間であったことを語る。
蓮見さんは相も変わらず私の話をよく聞いてくれて、私は気づけばまた溜めかねたものをぶちまけるように全てを吐き出していた。
「……なるほどな。ダンナの浮気相手との直接接触、しかも相手は素知らぬ顔で擦り寄ってくる……と。それは心が荒むわな」
蓮見さんは眼鏡を取り払って眉間を揉む。それから訳知り顔で頷いた。
「……そうなんです。仕方なしに連絡先は交換したものの、やり取りするのはただストレスでしかなくて」
私は言いながらため息を吐く。
「仲良くなりたいなんて、そんなの真っ赤な嘘だって分かりきっているだけ、余計に……」
百合花の言動全てが、私をおちょくっているように思えてならないのだ。
「まあ、そうなるよな。
ダンナの方は、お前らが顔見知りなこと知ってたんだっけ?」
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