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「いえ、夫もそのことはこの間初めて知ったみたいで……本当、嬉しくない偶然ですよね」
「偶然ねえ……」
その含みのある言い方に、私は内心首を傾げる。
「案外、逆だったりして」
「え?」
「その女がたまたま浮気相手に選んだ男の妻がお前だったんじゃなくて、お前のダンナだったからこそ浮気相手に選んだ―――とか」
それは思いもよらないことだった。
「もしもその女が以前からお前に何かしらの感情を持っていたとしたら、あながち有り得ない話でもないかと思って」
そして私は思い出す。
『だって私、アンタなんて大っ嫌い。ずーっと、アンタが落ちぶれた姿を見たかったの』
前回の人生で、そう、私に言い放った百合花。あの時に向けられた強烈な悪意の感覚が蘇り、背筋が寒くなる。
そういえば、これまであまり深く考えたことはなかったけれど、私はどうしてあんなにも百合花から疎まれているのだろう。
過去知らずのうちに、私はそんな悪感情を持たれるような“何か”をしでかしていたのだろうか?
「ま、あくまでそんな可能性もあるって話。
どの道やることは変わらないから、そう考え込む必要はねぇよ」
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