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6-2話
「そろそろ、母さんたちと同居しようと思うんだ」
ある日の朝、浩一がおもむろに切り出した。
浩一に呼びつけられ、愚図る陸斗を腕に抱いたまま向かいの椅子に座った私は、それを聞いて思う。
―――ついに来た。
この時期に同居話が持ち上がるのは、前回と同じだった。
「……同居? どうして、急に……」
私は腕の中の陸斗をあやしながら、何も知らないふりをして小首を傾げる。
「最近また、母さんからせっつかれてるんだよ。
もっと気兼ねなく孫の顔が見たいって。
確かに今は陸斗もいることだし、一度は無下にした母さんの願いを叶えてやるのもいいかと思ってね。やっぱり俺は長男だしさ」
浩一はペラペラと並び立てる。
「それに天音も近距離とはいえほぼ毎日あっちに通うとなると大変だし、同居なら何かと助けて貰えるだろ。家賃はいらないって言ってくれてるし、経済面でも大分楽になるよ」
そう、独りよがりで鼻白むような御託を。
そして、私と目を合わせて尋ねる。
「―――な、だから……いいよな?」
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