6-2話

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「だって勝手が違くなるとか上手くいかないとか、そういうのって全部同居してみないことには分からないことだろ? そんな“もしも”が理由って言われても俺は納得できないよ」 「…………」 目の前で思いっきりため息をついてやりたい気分だった。 私にとっては始まる前から分かりきったことが、この人にはまるで分からない。 「なあ、大丈夫だって。今回のことは俺の親の意向を汲むことになるんだから、そんな悪いようにはしないさ。同居したら天音のこともきっとこれまで以上に可愛がってくれるよ」 黙り込んだ私をなだめるような浩一の猫なで声。 「だから……な? 天音の我儘で断って、母さんたちとの関係にヒビを入れるのも嫌だろ」 その言葉に、思わず失笑が漏れた。 「……関係なんて、ヒビどころかとっくに壊れてるのに」 「え?」 浩一が聞き返してくる。私はそれに構わず切り出した。 「……貴方に、聞いて欲しいものがあるの」 その言葉と共に、テーブルの上に自分のスマホを置く。 「な、なんだよ」 私は無言のまま既にセッティングしてあったソレの再生ボタンを押した。
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