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『……駄目ね、まるでなってない。見目だけ良くしたところで塩気が強すぎるのよ、なんだか下品な味。育ちの悪さはこんなところにも影響するのかしらねぇ』
途端に流れ出す音声。
「は……?」
浩一が、小さく声を漏らすのが聞こえた。
『はあ、本当に使えない女。どうして浩一はこんな女を嫁に選んだのかしら……』
『身寄りのないアナタのような女を貰ってやったのだから、せめて婚家に最大限尽くすのが礼儀というものでしょう』
続け様に聞こえるこの音がよく見知った人物―――自分の母親の肉声であることに気づいたのだろう、浩一は唖然とした様子でスマホを見つめていて。
「なんだよこれ……」
「……聞いて分かる通り、お義母さんと私の会話の一部」
再生を終えたスマホを、私は自分の方に引き寄せる。
「私が、これまで二人きりの時に言われてきたことだよ」
「……いやでもそんな、本当に……?」
浩一は狼狽えたように呟いて、私を見る。
私は悩んだ末に、浩一にこれまで録音した義母の嫁いびり音声を聞かせてみることにしたのだ。
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