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その日、浩一は夜中に帰ってきた。
これまでの時間を共に過ごしたのは言わずもがな百合花だろう。
「おい!」
そして浩一は、ソファの上で微睡んでいた私を叩き起す。
「この家の主の帰りに出迎えもなしとはどういうことだァ?」
「……酔ってるの?」
目が合うなり、気が大きくなったようなこの態度。
すでに外で飲んできたのか、口からは酒のにおいが漂ってくる。
「あー? ちょっとだけだよちょっとだけ……」
浩一は少し赤らんだ顔でへらへらと笑う。
「そうだ」
そして思い出したように手を打ち、「天音に見せたいものがあるんだよ」そう言って開いたビジネスバッグの中に手を差し込んだ。
そして勿体ぶるようにゆっくりと引き出したそれを、私の眼前に突きつける。
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