1話

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今日は夜勤だ。その出勤時間まではまだ幾ばくか余裕がある。 なんの気なしにつけたテレビでは、夕方のニュースが始まったばかりだった。 政治関連、芸能ゴシップや事件事故。 少し伸びていた爪を切りながら、聞こえてくる情報に耳を傾ける。 『東京都〇〇区〇〇町の用水路に男児が転落したと近所の女性から119番通報がありました』 聞き覚えのある地名。私は顔を上げた。 『男児は誤って転落したと見られ、病院に搬送されたものの死亡が確認されました。死因は溺死ということです』 それでもまさか()()だとは思わずに、ただ痛ましい事件に「可哀想」と胸を痛める。 しかしアナウンサーの次の言葉に、呼吸を失った。 『死亡したのは長尾陸斗(ながお りくと)くん(3歳)』 「……え?」 全身から血の気が引いていく。声が震える。頭をガンと鈍器で殴られたような衝撃に、続くアナウンサーの言葉も碌に頭に入らない。 『警察によりますと陸斗くんは家族が寝ている間に1人で外出したと見られており、現在詳しく捜査中で―――』 ただ、画面に映し出されているのは記憶にあるよりも少し大きくなった、それでも間違えようのないあの子の姿。
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