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長尾天音。そう名乗っていた3年間は、私にとって地獄の日々だった。
浩一と知り合ったのは20歳の時。
とある会社のビルの清掃員として働いていた私に、そこに勤める浩一が声をかけてきたことがきっかけ。
そこから約1年の交際期間を経て、21歳で浩一からの熱烈なプロポーズを受けた。
7歳年上で、優柔不断なところがある私をグイグイと引っ張っていってくれる浩一は大人で頼もしくて、初めての恋人だからこそ「この人が運命だ」と愚かにも信じ込んでいた。
それに結婚前に紹介して貰った浩一の両親も優しくて、両親を早くに亡くして施設育ち、そんな私の生い立ちも気にしないと言ってくれたから
だから、半ば流されるように決まった結婚でも、上手くいくと思った。
「私たちを本当の親と思ってくれていいからね」
そんな義両親の言葉を真に受けて、憧れていた家族というものを私も持てるのだと、“幸せ”になれるのだと思っていた。
それが地獄の始まりだとも知らずに。
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