幸せ味のミルクラッテ

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 俺とこいつらは、かれこれ数年来の付き合いになる。出会いは、日本映画の撮影が韓国で行われた時だ。その頃俺は、まだ俳優一本でやっていた。  若い頃の俺は、それなりにチヤホヤとされていて、準主役級の役どころをいくつもこなし、そろそろ主演作をと、周りから期待されていた。  しかし、そんな期待絶頂の折でも、年頃の男子であれば避けて通れない、兵役という高い壁が俺の前に立ちはだかった。秘密の抜け穴を見つけることも出来ず、無視を決め込むわけにもいかず、まさに俳優としてこれからという時期に、俺は、従順に兵役に着くしかなかった。  今よりも少しばかり長かった任期を終え、俳優業に復帰した俺を待っていたのは、めくってもめくっても限りなく続く、真っ白なスケジュールのページだけだった。  芸能界とは、そういうところだ。どんなに人気があっても、少し顔を見せなければ、直ぐに代わりが現れる。分かっているつもりでも、当時の俺は、そんな現実が受け入れられなかった。  焦りから俺は、毎日のように事務所で怒鳴り散らしていた。そんな俺を見兼ねて、社長が取ってきた仕事は、復帰作としてはあまりにも残念すぎる、日本映画への出演だった。
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