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こうして、いざコーヒーを淹れようと準備を始めたところで、ようやく、テルのあの微妙な表情の意味が分かった。
実は、コーヒーは苦くて飲めないのだと。しかし、せっかく誘われたのだから、その場を乱したくなかったのだと。
控えめに微笑みそう伝えてきたテルに、なんとも日本人らしい、自己主張をしない控えめな奴だなと、俺は呆れた。しかし、そんな奴が、こと芝居となると、しっかりと己の意見を主張するのかと、俺は大いに感心した。
そこで俺は、テルのために、撮影用のキッチンに揃っていたもので、ラテを作った。
その時以来、奴らは、このミルクラッテを飲みたがる。
これを機に俺たち3人の縁は繋がった。テルの芸能活動が韓国にも広がったことは、俺たちが親交を深めるうえで、大きな要因だった。
あれから数年が経ち、2人は、韓国でトップクラスの人気俳優になった。2人は「いつかまた、3人で作品に出よう」と事あるごとに言ってくるが、俺は案外、今の生活が気に入っている。
俳優復帰を果たしたものの、やはり、以前のようには、俺を必要とする作品には巡り会えず、日々をなんとなく過ごしていた頃、ふと立ち寄った喫茶店で、俺は転機に出会った。
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