幸せ味のミルクラッテ

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 しばらくマスターの元で修行をしていると、マスターが店を俺に譲りたいと言い出した。俺としては、これからも俳優業をメインに動いていくつもりをしていたので、その申し出は大いに困った。  しかし、マスターもいよいよ隠居生活に入るというので、餞別がてら、俺は店を買い取った。  こうして、俺は喫茶BAR「ジュイン」のマスターとなった。  俺が店を始めたと知るや否や、2人は、いや、主にテヒョンは、この店にやって来るようになった。  2人とも、いつまで経ってもミルクラッテ以外は飲まない。いつしか俺も、2人が来る前には、それを用意するようになっていた。他の場所では、コーヒーやアルコールを口にしているという話を聞くので、飲めないのではなく、敢えてミルクラッテを飲んでいるようだ。  カップに口をつけつつ、ポンポンと言葉を弾き出すテヒョンに対して、テルは、言葉少なに、しかし、店に来た直後よりは、表情豊かに言葉を返す。  そんな2人をどこか保護者目線で見守っていると、不意にテルが声をかけてきた。 「ジェシクさんは、どうして俳優をしながら、マスターをしているの?」 「ん?」  突然のことに、一瞬反応が遅くなる。すると、間髪入れずにテヒョンが揶揄ってきた。
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