幸せ味のミルクラッテ

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「ジェシク兄、もしかして、寝てたの? まだ寝るには、早い時間だぜ」 「いや、お前らを見ていたら、昔のことを少し思い出してな。で、何だ? テル? 突然どうした?」  テルの話を聞こうと、彼の瞳を見つめれば、心なしか翳りをみたような気がした。 「テルさ〜、俳優辞めようか悩んでるんだって」  テルが口を開くより早く、テヒョンが話題の核心を口にする。俺は、チラリとテヒョンに視線を送ってから、再びテルを見つめた。 「そうなのか? テル」 「う〜ん。まだそこまで思ってる訳じゃないけど……なんか、ゆっくりしたいなって思って。僕たちはさ、演技で色々な役をやるじゃない? それが、いろいろな人生を歩んでるような気がするんだよ。いろいろあり過ぎて、ちょっと疲れたって言うか……」  なるほど。テルは、役に入り込み過ぎるから、クランクアップした後も、なかなか素の自分に戻れず、いろいろと抱え込んでしまっているようだった。 「そうか〜? 僕は、色んな人になれて、いろんな経験を擬似体験できて、楽しいと思うけどなぁ?」  テヒョンが言うことも一理ある。それが俳優の醍醐味でもある訳だし。しかし、テルのように役が抜けにくい俳優もやはり一定数いるのだ。
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