幸せ味のミルクラッテ

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「なあ、テル。仕事なんて、無理してまでやるもんじゃないぞ」  テルは曖昧に微笑みを返す。終始見せるテルの笑顔は、どこか不安定に揺れている。以前の俺なら、この微妙な変化など感じ取れなかったかもしれない。店を始めて、汲み取れるようになったことだ。 「仕事が辛いなら、しばらく休め。俳優なんて仕事は正直、替えの効く仕事だ。だから、休むのが怖いって言うなら、息抜きがてら、他の事をしてみろ。一つの事にこだわり過ぎて、思い詰めるのは良くないぞ」  テルは、すっかり冷めてしまったミルクラッテに視線を落としつつ、小さく頷く。その顔はどこか硬さを残しているようで、俺は、不安に駆られた。そんな不安を拭いたくて、柄にもなく冗談めかした口振りで、テルの気を引く。 「何もする事がないなら、俺の店でバイトでもするか?」  俺の提案に、テヒョンが無邪気に食いついた。 「何それ〜! 僕も! 僕も!」 「お前は、兵役前に仕事が詰まってるんだろ? 飲みに来るだけにしとけ」 「ズルいよ〜。テルばかり。贔屓だ」  口を尖らせ、文句を言い募るテヒョンを呆れたように見て笑うテル。少しは、心のしこりがほぐれただろうか。 「ありがとう、ジェシクさん。でも、テヒョン程じゃないけど、僕もそれなりに仕事が入ってるんだ。放り出す訳にはいかないよ」
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