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“今から行く”
またしても、必要最低限の言葉で、有無を言わさぬ意思をスマートフォンは伝えてきた。まぁ、そのつもりでこちらも店じまいをしたわけなので、反対の意はないのだが。
スマートフォンのメッセージを確認し終えると、俺は、またカウンターの中へと戻り、業務用の冷蔵庫から、牛乳、コンデンスミルク、ハチミツ、それから、コーヒー豆を取り出す。
片手鍋と、黒い陶器のカップを3つ棚から出すと、それに湯を入れた。カップを温めておくためだ。その間に、ミルにコーヒー豆を入れ、極細挽き、いわゆる粉状になるまで、ミルを無心でガラガラと回す。
コーヒー豆が空気に触れて、芳しい香りを立たせ始めた。俺は、ミルを回す手は止めずに、目を閉じて、挽きたての匂いを楽しむ。
今は、なんでも便利で、電動で簡単に作業が出来るが、やはり、俺は、ミル挽きが好きだ。どんなに手間でも、何よりも、無心になれるこの作業は、辞めるわけにはいかない。
なんとなくそんなことを考えていると、カウベルを鳴らし、閉店の装いをしているドアを当たり前のように開けて、店内へと2つの影が入ってきた。
「ミルクラッテ2つ、お願〜い」
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