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外国映画とはいえ、主要キャストならば、まだ良かったのだが、俺に与えられたのは、セリフが数行しかない端役だった。
当然俺は、荒れに荒れた。「どうして俺が」「なんで俺が」と悪態をつく日々。そんな風に過ごしたところで、スケジュールが埋まるわけでもなく、役作りも何もしないまま、唯一与えられた仕事の日は、あっという間にやってきた。
俺の出番は、主人公がソウル市内を友人と観光しているシーンだった。主人公が訪れた店のマスターが俺に与えられた役。韓国語が通じない主人公に対して、これでもかと捲し立てる、それが俺の復帰後、初の仕事だった。
そんな仕事、役作りなどしなくてもと、悠長に構えている俺の前に現れたのが、主人公役のテルだった。
テルは、言葉も通じない韓国俳優の俺たち1人1人に、丁寧に挨拶をしていた。
言葉も通じない、納得のしていない仕事の相手なんてとテルを軽んじていた俺は、碌に挨拶もしなかった。
テルが俺の元に来てから、撮影が開始されるまで、俺は、何とは無しに、テルの動向を目で追っていた。相変わらず、キャストに挨拶をしまくるテルは、やがて、1人のエキストラの手を引いて、何処かへ向かった。
程なくして、台本に修正が入ると連絡を受けた。
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