幸せ味のミルクラッテ

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“今どこ?”  カウンターに放り出していたスマートフォンが震えながら、そんな短いメッセージを伝えてきた。  俺は、手にしていた布巾をキッチンに置き、磨き上げたカップとソーサーを棚へ戻すと、スマートフォンへと手を伸ばす。  メッセージアプリを起動し、先程のメッセージに対して、“店”とだけ答えると、仕事の際は常に身につけている黒のギャルソンエプロンのポケットへそれを滑り込ませた。  そして、作業をしていたカウンターを出ると、足早に店の入り口へと向かい、ドアに掛けられた木目調のOpenと書かれたプレートを、クルリと裏返し、Closeにした。  ここ、喫茶BAR「ジュイン」の営業時間は、午前10時から、午後の10時まで。店内にはゆったりとしたクラシカルな曲が、1日中静かにかかり、日中は、ゆったりと、夜は、しっとりと過ごせる空間として、幾人かの常連客に好まれている場所だ。  時刻は、午後8時を過ぎた頃。いつもよりも随分と早いが、ドアプレートを裏返した俺は、ドア窓に掛かるショート丈のサテンカーテンも引き、店じまいのスタイルを取る。  入り口の足元をほんのりと照らすライトも落とし、完全に店じまいを済ませたタイミングで、ポケットに入れているスマートフォンが、また震えた。
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