フォース・ブルーに憧れて

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フォース・ブルーに憧れて

 僕の、大好きな大好きな、双子の妹の話をしようと思う。これは僕がまだ小学校二年生だった時のこと。  僕は男で妹は勿論女の子だけれど、双子ということもあって僕達は見た目がよく似ていた。中学生になった今はそんなにそっくりに見られないが、当時は間違えられるほどではなくても一発で兄妹だとわかるくらいには似ていたらしいのである。  ついでに、好きなものも似通っていた。幼い頃から僕の影響で、妹は特撮ヒーローをよく見る子供だったのだ。小学校二年生当時、放映していたのは“烈風戦隊フォース・ファイブ”。お馴染み、カラフルな色を纏った五人の男女が、海の底からやってきて人類を駆逐しようとする深海人とバトルするというものである。子供向けのヒーローと侮るなかれ、これが環境問題も絡めていて結構よくできていたのだ。最終的には敵の深海人たちも人類による水質汚染に苦しんでいたことがわかって、共に海と陸を綺麗にしていこうと和解して終わるエンドに至るというか、敵を“ざまぁ”することなくハッピーエンドになるのが非常に気分良かったというか。まあ、その戦隊モノの詳細は置いておいて。  僕と妹の弥和(みわ)は、毎週日曜日いっつも並んでその戦隊ものを見ていた。生活とか言動とか、いろんなところにその影響が出ていたと思う。親しい友達同士、あるいは家族内でしょっちゅう戦隊ゴッコをしていた。それを念頭に置いて、聴いてほしい。 「今日は皆さんに、書いて欲しいものがあります!」 「げ」 「作文をやってもらいます」 「ぎゃー!!」  二年生の時だけ、僕と弥和は同じクラスだったのだ。  そして国語の時間に同じ課題を出された。作文だ。お題は“将来なりたいものは何か?”である。  僕は少し心配してしまった。というのも、弥和は国語が、特に作文はとても苦手だったからだ。この頃から、どちらかというと理数系の脳みそを持っていたのだろう。作文の時間となると、まず最初の一行から出てこない。家に持ち帰る羽目になり、全然書けなくて僕にヘルプを頼むことも少なくなかった。なりたいもののイメージを出すのも苦手で、どうにかイメージが絞り出しても一行目の書き出しを考えるところで詰まってしまう。その妹に、最低ラインの“原稿用紙一枚いっぱい”を埋めることができるかどうか。早々に“将来はサッカー選手になりたい”という当時の夢についてさくっと書いて終わってしまった僕と違って、やっぱりというべきか弥和は悩んでいる様子だった。
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