花曇りの白木蓮

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花曇りの空の下、白い花に向かって手を伸ばすのに、ちっとも届かない。 蔦が絡まり、趣きのあるアイアン製の柵に捕まって、思い切り背伸びして。 それはもう必死に。 その姿はかなり滑稽だろうな、そう頭によぎった瞬間。 「……なにしてんの」 笑いを噛み殺した様な、彼の声が私の心を、身体を震わせる。 思わず振り向いて、無言で目を見開いていると 「目、落ちそうなんだけど」 そう言って優しく笑う彼。 「や、だって散る前にどうしても触れてみたくて」 ……シチュエーションは夢見たものじゃなかったけれど 今、彼と、一緒にこの花を……。 ひらひら、と白い花びらが落ちてくるのに視線を奪われて 思考が、夢見たその瞬間(とき)に夢中だったのに。 気づけば、彼が目の前に、手を伸ばせば触れられるほどに近くにいて。
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