3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
花曇りの空の下、白い花に向かって手を伸ばすのに、ちっとも届かない。
蔦が絡まり、趣きのあるアイアン製の柵に捕まって、思い切り背伸びして。
それはもう必死に。
その姿はかなり滑稽だろうな、そう頭によぎった瞬間。
「……なにしてんの」
笑いを噛み殺した様な、彼の声が私の心を、身体を震わせる。
思わず振り向いて、無言で目を見開いていると
「目、落ちそうなんだけど」
そう言って優しく笑う彼。
「や、だって散る前にどうしても触れてみたくて」
……シチュエーションは夢見たものじゃなかったけれど
今、彼と、一緒にこの花を……。
ひらひら、と白い花びらが落ちてくるのに視線を奪われて
思考が、夢見たその瞬間に夢中だったのに。
気づけば、彼が目の前に、手を伸ばせば触れられるほどに近くにいて。
最初のコメントを投稿しよう!