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「あら、どうしたの?」
「いや、その……」
「わたしね、Bちゃんちに行きたいの!」
大きな声で叫ぶようにして言う可奈子ちゃんに、
「こら、だめよ。Bちゃんのママにも、予定があるんだから」
と言って咎め、そのときちょうどエレベーターが来たので、
強引に可奈子ちゃんを連れていこうとしたとき、
「ふふ、いいわよ。おいで。
みゆきさんも、無理に連れて行っちゃうんじゃ可哀想じゃない」
Aさんが笑顔で言いました。
それを聞いて可奈子ちゃんはみゆきさんの手を振りほどき、
「本当?」
嬉しそうな声をあげてAさんに駆け寄ります。
「こら、可奈子」
「いいのよ、本当に。
旦那は今日も仕事でいないし、1人でいるより楽しいから」
「でも……」
遠慮しようとしたみゆきさんに、今度は旦那さんが、
「まあ、いいじゃないか。
あそこまで言ってくれてるんだし、お言葉に甘えよう」
嬉しそうにそう言うので、さすがに断れなくなりました。
「じゃあ、お願いしてもいい?」
「ええ。ふたりとも、楽しんできてね」
快く可奈子ちゃんの世話を受け入れるAさん。
その手に引かれて、楽しそうに歩いて行く可奈子ちゃん。
彼女の背中を見ながら、みゆきさんはなんだか、
娘さんを奪われてしまったような、不安な感覚に襲われたそうです。
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