bonus track 3

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「ごめん杉山、俺帰ってもいい?早く会いたい人がいるんだ」  佑木くんが腕時計を見る。ああ、首席で赤ネクタイを取れと言った人だね?  俺は頷くとギターをスタンドに戻した。練習室を出て行こうとする佑木くんに、俺は声を投げた。 「もしバンドでライブをやるくらいになったら呼んでくれる?」  佑木くんが振り向く。 「俺、佑木くんが惚れたっていうボーカルの人の声も聴いてみたいな」  素直にそう思った。  悲しい顔をさせたくないと佑木くんに思わせた人。首席を取るために手段を選んでられないほど、佑木くんを取り乱させることができる人。 「もちろん!世界一の声だよ」  こんなに幸せそうな顔を佑木くんにさせる人。  もうあのピアノが聴けなくなるのかと思うと少し、いやかなり寂しいけど、きっと佑木くんが奏でるギターの音色も遜色なく美しいはずだ。 「そうだ杉山」  練習室を出て行こうとした佑木くんが振り向く。 「俺に声かけてくれてありがとう。親しい友達いなかったから杉山を訪ねたのは確かだったけど…」  佑木くんが微笑む。 「それが杉山でよかった」  ああ…。  ああ、神様ありがとう。  佑木くんにこんな言葉をもらえるなんて、本当に…。  俺は少し涙ぐんで「へへっ」と笑った。 「じゃあ、また来週な」  佑木くんが手を上げる。 「うん、お疲れ様」  俺も手を上げて応えた。佑木くんは走って部屋を出て行った。  俺の見つけた道って、実は音楽系のライターなんだよね。  いつか雑誌でピアニスト佑木奏司の記事を書くとかいいなって思ってたけど…。 「バンドの名前聞いておかなくちゃ」  俺が書くのは、愛して止まないボーカリストと組んだ、ギタリストの佑木奏司の記事になりそうだ。 You're my rock..... REVOLT STRONG RED bonus track END
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