EXTRA 1.

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 音楽科の緑のネクタイは、入学式に向けて制服を作る時に全員購入する。入学式では新入生は全員ネクタイをせず、ポケットに入れて臨む。そして式ではまず入学試験での各専攻の成績上位五名が発表され、その生徒に赤いネクタイが授与される。赤ネクタイになれなかった生徒は持参した緑のネクタイを着けることになる。ネクタイを装着する儀式が式次第に組み込まれているのだ。 「似合いませんか?」  奏司が綴の前に立つ。  あ、こいつまた背伸びたか?そう思って嫌な顔をした綴を見て、ネクタイが似合わないと取ったのだろう、奏司が「そんなに変ですかね?」と更に問いかけた。 「いや、それは別に…」 「それ?」 「いいんだよ」  煙草吸ってたせいかなあと思いながら、綴は奏司の緑のネクタイを引っ張った。 「何で緑?」 「もうすぐ選抜試験なので。俺、今回で赤いネクタイじゃなくなると思うんです」 「選抜試験?」  綴が問い返して奏司が頷いた。 「年に二回ある…まあ中間テストや期末テストと同じようなもので。通称『ネクタイ選抜』って呼ばれてるんですけど」
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