EXTRA 1.

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 時計坂学園音楽科の赤いネクタイは、各専攻の優秀演奏者の証だ。生徒たちは皆、赤いネクタイが着けたくて練習に励む。年に二回ある定期選抜試験でそれは決められ、中学から六年間のうち一度でも選ばれれば誉れという、かなりのステータスを持ったものだった。  選抜試験は基本全員参加、全員に同じ課題が与えられ、四日間に渡って試験が行われる。 「高校三年の後期の選抜試験が一番入れ替わりが激しいんですよ」  言いながら奏司は綴の横に座ると、緑のネクタイを解いた。 「音楽科と言えど、音楽関連に進学する生徒ばかりじゃないので。俺もそうですけど、二学期からは、一般大学や音楽系以外の専門学校を志望する者、就職希望する者…そんな生徒は普通科に混じって受験科目の勉強がカリキュラムに組み込まれるんです」  その奏司の言葉で、ああこいつ音大行かないんだっけと綴が再認識する。
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