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「はあ…」
奏司は屈んで、今日もうっとりとベッドを眺め溜息をついた。その悲惨と思われる状況とは真反対の薔薇色の表情。
幸せ過ぎる。
心から奏司はそう思っていた。
奏司の目の先、大好きな藤音綴が眠っている。
奏司はちらりとベッドのヘッドボードに置かれた目覚まし時計を見た。綴が合わせた時間まであと1分。奏司は時計を手に取るとタイマーを切った。これは毎朝の日課だ。
1分間、寝顔を堪能する。
「綺麗だなあ…」
そして毎朝同じ感想を漏らすのも日課。
茶色がかった長いまつ毛、小さな寝息が漏れる少しだけ開いた薄紅の唇。
キスしたいなあ。
こう思うのも毎朝の日課。
寝返りを打った綴の茶色の髪が頬にかかる。サラリと揺れる髪の毛の間からピアスホールが二つ開いた形のいい耳が覗いた。奏司がそっと顔を寄せる。
ジャスト1分。
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