bonus track 2

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「その人は佑木くんにピアノ続けて欲しいの?」  佑木くんは首を振った。 「そうじゃないんだけど、今回は俺がそうしたいんだ」 「………」 「勝手な俺の意思で杉山にまで迷惑かけてごめん」  振り向いてぺこりと頭を下げた佑木くんに、俺はあわてて首を振る。 「いや!マジで頼ってくれて嬉しい!練習室でちょっと喋っただけなのに、俺のとこに来てくれて本当に!」 「…そのくらい、音楽科には友達がいないんだなって、今回痛感した」 「あ…」  そういうことになるよね。昨日ちょっと話しただけのクラスメイトを頼るってことは。何となく二人で空笑いする。 「じゃあ佑木くんはこれから何をするの?」  家を出てまで選んだものは何なの? 「バンド」 「え?」 「ギター、弾くんだ」  ちょっと照れたように佑木くんが言った。 「マジで?!」 「意外過ぎる?」 「ううん、カッコいい!絶対カッコいい!」  俺は佑木くんがバンドでギターを弾いている所を想像した。想像だけでもうめちゃくちゃかっこいい。これ、母さんと姉ちゃんに言ったら発狂するわ。 「でもバンドってことは一人じゃないんだよね?」  俺の言葉に佑木くんが頷く。 「俺がボーカルの人の声に惚れて、やっと組んでもらえるようになったんだ」  目を閉じて息を吐いた佑木くんの表情は安堵した感じで、多分沢山の紆余曲折を経てたどり着いたんだろうなということは、彼の家柄のことを考えても容易に想像がついた。 「惚れ込んだ人と組めるなんて幸せだねえ」  佑木くんが俺を見て、ゆっくり頷いた。 「うん」  サラリと揺れる黒髪から覗く両の目が、とても幸せそうで、俺は「あれ?」ってなる。
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