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「綴さん今日は軽音部の他のバンドの手伝いでしたよね?」
「ああ」
「夕飯どうしますか?」
「多分外で食ってくるわ」
分かりましたと頷いて奏司が空の食器をシンクまで運んだ。
「遅くなるってことですね。じゃあ、ギター借りていいですか?練習したいので」
綴が頷きながらキッチンに顔を向ける。
「俺洗うからほっといていいぞ」
綴が奏司に向かって声を投げた。奏司は首を振るとサッと食器を洗ってしまった。
本当に何から何までやるなこいつ。
綴が奏司をゆるりと見つめながら思う。気を使っているのか、本当に楽しくてやっているのか、その線引きが綴には分からなかった。
奏司がめくったワイシャツの袖を直しながら部屋の角に置かれた姿見の前に立つ。ポケットからネクタイを出して巻いた。
「…緑?」
疑問の声を発したのは綴だった。奏司の首に巻かれているのは、音楽科で成績上位五名の選抜から漏れた生徒が着ける緑色のネクタイだった。
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