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母さんの相手を少しだけして真心の元に向かった。真心はもうすでに食べ終わっており、ソファーの前に体育座りして毛布に包まっていた。
「食べ終わった?」
「うん。美味しかった。ありがとう。」
「よかった。少しは楽になった?」
「うん。薬も効いてきて眠たくなってきた。」
確かに真心の目はトロンとし始めていた。ご飯を食べて体温が上がってきたのと、偏頭痛の薬の影響で眠たくなってきたのだろう。
「じゃあまた連れて行くから、後ろに乗って。」
真心の体温を背中に感じながら母さんの方を見た。
「器用に担ぐのね。右手しか使えないのに。」
「真心が軽いからね。しっかりと自分に体重をかけてくれて安定するから。」
「そう。真心、今日一日寛にしっかりと甘えて、元気になりなね。」
自分の首に触れてる真心の顔の温度が上がった気がした。赤くなっているのだろうか。返事はなかったがさっきよりも腕の力が強くなった。
「じゃあ、寝よっか。」
真心は頷いた。母さんは熱々言いながらタマゴ粥を食べている。少し楽しそうだった。
真心をベットに寝かせ、近くに座る。真心からのお願いでしばらく手を繋いでいた。両手が使えないのでしばらく何もできなかった。真心が寝始めると手を離し、片付けをしに下に降りた。しかし、片付けは母さんがすでにしていた。
「片付けはしておいたよ。怪我人だし、真心にさっきは悪いことしちゃったから。ほら、あんたはさっさと真心の部屋に行って面倒見なさい。」
「ありがと。助かったよ。」
洗い物も片手でできることは限られている。真心や愛も手伝ってくれている。自分が骨折して一番負担をかけてしまっているのは母さんだろう。仕事に影響が出てないのが唯一の救いだが明らかに疲れが見える。母さんには感謝しかない。
「怪我人は変な気を使わずにさっさと怪我を治すの。せっかくの休みなんだからこれからのためにいっぱい休みなさい。」
自分が考えていたことを見透かすように母さんは言ってきた。顔にでも出てたのかな。
「そうだね。じゃあ真心のとこ行くわ。」
リビングを後にして、真心の部屋に戻った。真心は壁に背を向け丸まって寝ていた。真心のそばに座り、再び手を握り直した。自分の手を握る力が強くなった。
「おかえり。」
「起きちゃった?」
「寝たと思ったらすぐにどこか行っちゃうから。」
手を繋いだまま真心は体を起こして自分の前に座った。
「Tシャツきてくれてるんだね。これはお父さんのやつかな。」
「せっかくおみあげで買ってきてもらったしね。もらった時は驚いたけど。」
このTシャツは真心たちが父さんについていったヨーロッパでのおみあげだ。3人ともいわゆる『I Love Tシャツ』というやつで地名は違ったが、ものの見事にかぶっていた。3人とも相手が何を買っているかわからない状況だったらしく、自分にお土産をあげるときに家族全員で笑った。
「面白かったよね。まさかだった。」
「とてもファッションの仕事している人間とは思えないセンスだったよ。3人とも考えることが一緒で笑たわ。」
「ここまでくると少し怖いけどね。」
真心との時間はいつもゆっくり流れる感じがする。真心の声のトーンとか、雰囲気がそうさせるのかもしれない。みんなで笑いあって少しうるさくしてしまうのも自分は好きだが、この静かな感じも好きだ。真心と自分にしか作れない空間で、他の人とはこうはならない。真心が自分の足の間にちょこんと座る。
「左手、さわれない。」
「折れてるからね。」
「早く治してね。」
「わかったよ。頑張るね。」
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