白い紫陽花 彼岸花編

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日向さんにはそう写っているみたいだが、おそらく両者とも何かあった時のために牽制し合っているだけ。佐藤さんと自分は似ているところが多々あるからこそ、怖さをお互いに知っている。また、お互いに利用できるとも思っているからだろう。前回の一件で自分には利用価値があるのだと佐藤さんは思ったのだろう。認めてもらっていることは少し嬉しかったが少し距離が近い。できればもう少し自分としては佐藤さんのことを見定めたいところだがこうも距離が近いと調子が狂う。 「では、またよろしくお願いします。今度は愛を連れて来ます。愛の卒論も終わりそうなので。」 「今時期にもう終わるのかい?随分優秀な子だね。」 「愛は自分とは比べ物にならないくらい優秀ですよ。基本的に成績を落とすこともなかったですし、就職先はもうすでにうちで働くことが決まってますから。就活も必要ありません。2年時にはすでにほとんどの単位取ってしまってましたから、学校に行く必要もありませんからね。」 「そうか。会うのが楽しみだね。君と佐々木さんにはよく会うけどそのほかは会ったことなかったからね。」 「そうですね。では予定を合わせてなるべく早く挨拶に向かいます。」 もうすでに結さんには挨拶は済ませたがお父さんにはまだだった。結さんとも問題なく話せていたから少し安心した。一家の中で最も社交的で人に好かれる愛だが、自分が関わると少し当たりが強くなる。結さんがあらかじめ自分たちの関係を知っていたからなのか、今回はそれがなかった。愛はおそらく家の中で一番頭がいい。いろいろなところに目がいき、気付き、解決する力が高い。対人は少し苦手のようだが計算高いところがある。昔、愛が話していた。『社交的なのはその方が生きやすいから。人に好かれるのははっきりしているから。その方が味方が増えてお得でしょ。』と言っていた。 「楽しみにしてるよ。予定が決まったら連絡くれるかい。」 「わかりました。ではここらへんで失礼します。」 そうこう話しているうちにすでに30分が経っていた。少し急ぎ目に医院長室を後にしようとしたが佐藤さんに止められた。 「かなり急いでるみたいね。そのくらい心配なのかしら。偏頭痛なんでしょ。」 先ほどまでの少しおちゃらけていた佐藤さんとは違い、威圧感を前面に出して話しかけて来た。 「心配ですよ。大切な人ですから。」 「そう。あなたは2人のためにどこまでできるのでしょうね。」 「愚問ですね。前も話しましたけどどんなこともしますよ。あの2人のためなら。それはあなたも同じでしょ。あなたたちの関係性はいまいちわかっていませんけど。」 「そうね。気になっただけよ。別に深い意味はないわ。ただ結ちゃんのことならどこまでしてもらえるのかなってね。」 「そうですね。自分が助けられるのも限度がありますから。真心と愛が第一。ただ自分の手の届く範囲だったらなんとかするとは思います。結さんも自分にとって大切な繋がりですから。もちろんその中でも優先順位はあります。」 「そう。優しいのね。ならこれからもよろしくね。結ちゃんのこと近くで見守ってあげて。それと真心ちゃんにお大事にって。」 「もちろんそのつもりです。では。」 佐藤さんに少し足止めをくらったが、予定よりも早く家に着くことができた。真心もまだ寝ているみたいだった。
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