白い紫陽花 彼岸花編

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「全社員に配っているけど大事にしてください。これ結構高いから。」 段ボールの中身は少し大きめのタブレットとこのためだけに父さんが作った特注のカバー、それとカバーの中に入るメモ帳だ。特注のカバーは入社時期によってデザインを変えている。 「これは自由に使ってもらっていいけど、タブレットには色々と制限をかけさせているから変なことはしないこと。手書き用にメモ帳も用意してあります。これからはいろいろなところでメモを取ることがありますけど、少しずつでいいから慣れていってください。気になることや気づいたことがあったらメモをちゃんと取れるように。疑問点などがあればタブレットの中にある連絡先に僕と君たちのこれから行く部署の上司のアドレスがあるからそこに送ってください。できるだけ答えられるようにするから、積極的にコミュニケーションとってください。」 すでに何かメモを取っている様子もあった。 そこから色々と説明を始めた。給料や休日のことなど、会社全体に関わることだけ。最初はメモを取っていいなかった人も周りを見てからメモを取り始めた。期待できるかな。そんな中自分は終始噛み噛みだった。 「これで全体の説明が終わりです。最後に僕に敬語は結構です。僕もこれ以降は敬語を使わないようにします。そのほうが話しやすいでしょ。これから、どうぞよろしくお願いします。」 自分は深々と頭を下げた。 「これから各部署の人が迎えにきてくれるから。名前を呼ばれたら、その人についていってね。」 会議室に続々と人が入って来た。新入社員らしく緊張した面持ちで自分の名前を呼ばれるのを待っている。次々と名前を呼ばれる中で1人だけ会議室に残っている女性がいた。 「はい。じゃあ、君だけ残ったことを説明するね。沢村めいさん。」 少し戸惑っているようだった。 「基本的にうちは希望した部署についてもらっているけど、例外がいてね。君はその例外になってもらいたいんだよ。強制はしないし、嫌なら嫌って言っていいよ。これは僕からのお願いだから。」 真心がめいさん用の資料を手渡しした。 「その資料に詳しく書かれているけど、僕からもしっかり説明するね。君にはモデルの仕事をしてもらいたいんだ。希望では事務課だったけど、事務課に所属しながら同時にモデルとしても仕事をしてもいいし、モデルとして真心の下についてもらうことも可能だよ。どうかな?」 返答はなし。無口なのは、真心から聞いていた。一通り資料に目を通してもらった。 「めいちゃん。無理して今決めなくていいよ。寛は待ってくれるから。」 珍しく、真心から話しかけていた。 「大丈夫です。もう決めました。資料の通りなら本当に真心さんの下で働けるんですよね?」 「そうだね。君には真心についてもらうかな。まずは、マネージャーじゃないけど、裏の仕事を覚えてもらうのと同時に、真心と他のモデルさんを見て勉強して欲しいからね。」 「わかりました。なら、やらせてください。」 めいさんは真心の方を向いて答えた。 「よし。なら、こっちは君が一人前になれるように全力でサポートするから。そんな君に早速、頼みたい仕事があるけどいいかな?」 これからの日程と仕事内容について自分から説明した。すでに決まっている仕事は、愛とのモデル業くらいだが他の人とは全く異なった仕事内容になる。もちろん給料についても詳しく説明した。後は、真心に任せても大丈夫だと判断し、自分は会議室を出た。 「お疲れ様。あの子だったんだね。君がモデルに推薦したのは。」
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