セルバタウンの夜に

2/11
前へ
/11ページ
次へ
「何度も言ってるだろ! ここは魔法も使えないようなやつが来るところじゃない」  アースは腕を組んで、来客の少年に声をあげた。 「アシスタント募集って書いてあるじゃん」  銀色の髪をツンツンに立てた少年はふてくされる。 「だ、か、ら。ここは魔法探偵事務所なんだよ。分かんないかなー」  壮大な森やきらめく川、みずみずしい自然に囲まれたセルバタウン。街の中央には巨大な水車がゆるやかに回っている。  その北方の森林の奥地に、レンガ模様の小さな探偵事務所がぽつりと佇んでいる。  アースが営む法探偵事務所だ。  アースは現在、『不眠症事件』を取り扱っていた。ここ数ヶ月、町民たちは不眠症に悩まされているのだ。  セルバタウンの町長から直々の依頼ということが、事の重大性を物語っている。  何者かの仕業か、それとも別の何か真相があるのか。アースは一人で事件解決に奮闘していた。  だが、一人での捜査には限界があることを感じたアースはアシスタントを募集していた。  そんな時――。 「魔法は使えないけどさ。オレ、このセルバタウンのみんなを救いたいんだ」  銀髪の少年が事務所の門を叩いたのだった。 「ちなみにキミ、何歳?」 「15歳」 「子供じゃないか」 「事件を解決するのに年齢なんか関係ないだろ」 「遊びじゃないんだよ、これは」 「そんなもん分かってるやい」 「いい加減に帰ってくれ。やることが山ほど残ってるんだ」 「アシスタントにしてくれるまでここを動かないかんな!」  ――はあ、疲れた。  アースはメガネを外し、目頭を強く揉んだ。どれだけ拒んでも引き下がらない少年の意志に疲れがでてきた。  仕方がない、エモーションを使おう。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加